第六章 ステージの上の王子様

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 シンデレラはお城の舞踏会で、自分を場違いだと不安にはならなかったのだろうか。  魔法にかけられて着飾っているとはいえ、彼女の日常は灰をかぶり継母と義理の姉たちにいじめられながら屋敷を掃除するだけのみじめな暮らしだ。  童話のお姫様に重ねるなんておこがましいけれど、シンデレラの戻らなければならない日常を私の貧乏暮らしと重ねてしまう。  バラード調のラブソングが終わり、間髪入れずシンセサイザーのうねるようなメロディーにのせてアップテンポな曲が始まる。  カラストの曲はまともに聞いたことはない。  だけど、ひときわ大きくなった歓声でこれが人気曲なのだと肌で感じた。  ジャケットを脱いで身軽な開襟シャツ姿になり、五人が飛び跳ねる。  それだけで一気に彼らの存在に現実味が増すのに、私なんかとはまだずっとずっと、遠く感じる。
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