第六章 ステージの上の王子様

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 設楽さんに促され、緊張でドキドキしながら楽屋のなかに足を踏み入れる。  香水と整髪料、デオドラントスプレーが交じり合ったような香り。  寺西さんの後ろにいた私は恐る恐る部屋の中を覗き込んだ。  ライトがたくさんついた鏡台とソファーとローテーブルが置かれた十畳ほどの部屋。  そこにカラフルストリームの五人がいた。  爽はソファーに深く沈み込んでスマホをいじっている。 「みんな、TNCホールディングスの寺西さんと灰田さんがお見えだ。ご挨拶して」  設楽さんのその声に爽が顔を上げて、こちらを見る。  その瞬間、彼が目を丸くして大きな声を出した。 「美羽?!」 「「え?」」  他の四人が一様に驚いた顔で爽と私に視線を往復させる。  寺西さんも「あれ、なに、知り合いだったの?」と私に耳打ちした。  ーーどうしよう。  勝手に他人のふりをしようと決めていたのに、これじゃあ知り合いだってバレバレだ。  私が戸惑っていると、何かを察したように寺西さんが口を開いた。
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