367人が本棚に入れています
本棚に追加
/245ページ
設楽さんに促され、緊張でドキドキしながら楽屋のなかに足を踏み入れる。
香水と整髪料、デオドラントスプレーが交じり合ったような香り。
寺西さんの後ろにいた私は恐る恐る部屋の中を覗き込んだ。
ライトがたくさんついた鏡台とソファーとローテーブルが置かれた十畳ほどの部屋。
そこにカラフルストリームの五人がいた。
爽はソファーに深く沈み込んでスマホをいじっている。
「みんな、TNCホールディングスの寺西さんと灰田さんがお見えだ。ご挨拶して」
設楽さんのその声に爽が顔を上げて、こちらを見る。
その瞬間、彼が目を丸くして大きな声を出した。
「美羽?!」
「「え?」」
他の四人が一様に驚いた顔で爽と私に視線を往復させる。
寺西さんも「あれ、なに、知り合いだったの?」と私に耳打ちした。
ーーどうしよう。
勝手に他人のふりをしようと決めていたのに、これじゃあ知り合いだってバレバレだ。
私が戸惑っていると、何かを察したように寺西さんが口を開いた。
最初のコメントを投稿しよう!