第六章 ステージの上の王子様

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 その後は寺西さんが場をとりなして、差し入れを五人に手渡すと会場を後にした。  帰りのタクシーの車内でも、ステージの上で踊る爽と、爽が口にした「ただの友達だよ」という言葉が何度も何度も脳裏によみがえる。  そのたびに胸の痛みをおぼえながら、車窓の外を流れていく景色をぼんやりと眺めていた。 「美羽ちゃんが前に言ってたのは、彼のこと?」 「え?」  隣を見ると寺西さんが窓際にひじをついて、こちらを見ていた。 「美羽ちゃんが好きなのは、都築くんだね?」 「……どうして分かるんですか?」 「君たちの反応を見れば、何かあるのは誰でも分かるよ」  くすりと小さく笑って、寺西さんは「なるほど、確かにそれはなかなかに……いばらの道だ」と囁いた。
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