367人が本棚に入れています
本棚に追加
/245ページ
爽のことばかり考えて過ごしていた日曜の夜。
ーーそろそろコンサートが終わる頃、かな。
お風呂あがりに布団に寝そべって、スマホの爽とのトーク画面をなんとはなしに眺める。
その時、弟の康太からの着信にスマホが鳴動した。
「もしもし。康太?」
康太が私に電話をしてくるなんて久しぶりだ。
貧乏暮らしで家族みんなが大変だからか、目立った反抗期もなく、中学生なのに新聞配達のバイトをして家計を助けている。我が弟ながら良くできた子。
何か相談ごとだろうか、なんて考えながら電話をとった私の耳に、スピーカーのむこうから康太の押し殺したような泣き声が飛び込んできた。
「……ねぇちゃん」
「康太? どうしたの? 何かあった?」
「……母さんが、母さんが倒れた」
「え?! 倒れたっていつ? 大丈夫なの? 今どこ?」
「さっき救急車で運ばれて長野諏訪総合病院にいる。どうしよう、姉ちゃん……俺、俺」
「と、とにかく落ち着いて」
「ごめん……。とりあえず何か分かったらまた連絡する」
康太のその声を最後に電話は切れた。
最初のコメントを投稿しよう!