第七章 触れたい

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 爽に話を聞いてもらいたい。  爽のぶっきらぼうなあの優しさに、少しでも励ましてもらえたら。  スマホの画面ごしでもいい……電子的なたったの数文字だけでも。  康太からの連絡と爽からのメッセージを待ちながら、私は祈るような気持ちで血の気の引いた冷たい指でスマホを握りしめた。  すると五分もしない内にスマホが震えだす。  慌ててディスプレイを見ると爽からの電話だった。 「美羽! 母ちゃん大丈夫か?!」  通話ボタンをタップした瞬間、こちらが何かを言う前に響く爽の大きな声。 「爽。ごめん。ごめんね。コンサートだったのに、こんな時に」  爽の声に安堵したのか、気付くといつの間にか声が上ずって涙声になっていた。 「そんなん、どうでもいい。弟はなんだって?」 「お母さん、倒れて救急車で大きな病院に運ばれたみたい。お父さんが説明を受けてたみたいだけど、まだ詳しくは……。どうしよう。お母さんに何かあったら、私……」 「そっか……。美羽、とりあえず落ち着け。落ち着いて、待ってろ」 「え?」 「いいから、そのまま家で待ってろ!」  一方的にそう言うと、あっけなく電話が切られた。
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