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――待ってろって、どういうことだろう。
駄目だ、頭が回らない。
お母さんのことが心配でたまらない。
康太からの連絡はまだない。
足から力が抜けて、へなへなとフローリングの床に座り込んだ。
膝を抱えて顔を埋める。
私、自分のことばっかりで……きっと前に電話で康太の塾のお金を頼ってきたとき、私以上にお母さんだって無理をしていたはずなのに。
それなのに、私は自分が大変になることだけに目をむけて、ついてないなんて嘆いていた。
私が知らない間に、お母さんは倒れるほどの苦労をしていたのかもしれないのに。
ーーお母さん、どうか無事でいて……。
それから一時間くらいして、マンションのドアチャイムが鳴った。
スマホのディスプレイの時計は二十二時半をまわろうとしている。
恐る恐るインターホンのモニターを見ると、ザラザラとした映像のなか、ハットをまぶかにかぶった男性の姿があった。
恐怖に心臓が凍りつきそうになって、足がすくむ。
帽子のツバのせいで顔がよく見えない。
時間が時間だし、不審者? 恐い……どうしよう……よりによってなんで今なの……。
そんなことを思っていたら、もう一度、男性がチャイムを押す。
そしてハットのつばに隠れた顔が、こちらを見上げた。
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