第七章 触れたい

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 ――待ってろって、どういうことだろう。  駄目だ、頭が回らない。  お母さんのことが心配でたまらない。  康太からの連絡はまだない。  足から力が抜けて、へなへなとフローリングの床に座り込んだ。  膝を抱えて顔を埋める。  私、自分のことばっかりで……きっと前に電話で康太の塾のお金を頼ってきたとき、私以上にお母さんだって無理をしていたはずなのに。  それなのに、私は自分が大変になることだけに目をむけて、ついてないなんて嘆いていた。  私が知らない間に、お母さんは倒れるほどの苦労をしていたのかもしれないのに。  ーーお母さん、どうか無事でいて……。  それから一時間くらいして、マンションのドアチャイムが鳴った。  スマホのディスプレイの時計は二十二時半をまわろうとしている。  恐る恐るインターホンのモニターを見ると、ザラザラとした映像のなか、ハットをまぶかにかぶった男性の姿があった。    恐怖に心臓が凍りつきそうになって、足がすくむ。  帽子のツバのせいで顔がよく見えない。  時間が時間だし、不審者? 恐い……どうしよう……よりによってなんで今なの……。   そんなことを思っていたら、もう一度、男性がチャイムを押す。  そしてハットのつばに隠れた顔が、こちらを見上げた。
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