第七章 触れたい

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「あの頃、反抗期だったのもあったし、芸能の仕事をするようになって思いあがって、すげぇ嫌な態度とってたんだよ。それが倒れて、病気の発見が遅れてたことが分かって……。このまま二度と会えなくなったらどうしよう。母ちゃんに言ったひでぇことも謝りてぇのにって、めちゃくちゃ後悔した」 「爽……」  そんな思いをしたんだ。きっとすごく不安だったよね……。 「結局、事務所が金を貸してくれて手術もその後の治療もすることができて、今じゃ母ちゃんピンピンしてるけどな」 「良かった……。そんな時に助けてくれるなんて良い事務所なんだね」 「あぁ。それまでは仕事に対してもとりあえずのバイト感覚でやってたんだけど、俺はちゃんとアイドルとして事務所に恩を返していこうって決めたんだ」 「そうだったんだ……」  だから爽はアイドルになったんだ。  お母さんを救ってくれた、恩返しのために。 「だから美羽の母ちゃんが倒れたって聞いた時、お前に後悔してほしくねぇって思ったんだ。母ちゃんに会わせてやりてぇって。だからこれは俺の自己満だ」
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