第七章 触れたい

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「今回のことで身に沁みたよ。これまでは色々なことを考えて自己破産するのを避けていたんだが、それも考えることにする。母さんやお前たちにこれ以上の苦労をかけられない」 「お父さん……」  お父さんは複雑そうな表情で首を揉むと、どさっとパイプ椅子に身体を預けた。  自己破産をすると様々な制限がかかるうえに、噂になったら私たち家族にも影響がでる。  だからお父さんは頑張って自力で返すことにしたんだ。 「でも今はとにかくお母さんの回復を第一に考えよう。私もできることがあればするから」  私の言葉に、疲れ切ったように肩を落とした二人が頷く。 「二、三日は様子見で入院して、あとは回復していくだろうってことだったから、美羽は東京に戻りなさい。仕事もあるだろう」 「こんな状況だから、しばらく残るよ?」 「そうか。それなら今夜はこっちに泊まって、明日、母さんに会ってから帰るといい」 「……うん、分かった。そうする」  しばらくお父さんと私の会話を静かに聞いていた康太が口を開いた。
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