第七章 触れたい

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「そういえば、こんな時間だけど姉ちゃんどうやって長野に来たの?」  問いかけられて、私はとっさに「友達が車で乗せてきてくれたの」と答えた。  それ以上に余計なことは言えない。  二人に爽の存在を知られたら面倒なことになるに決まってる。  血相を変えた私に、お父さんが目を丸くした。 「それはお友達に申し訳ないことをしたなぁ。父さんからもお詫びしなきゃ。お友達はどこに?」 「あ、いい!いい! 大丈夫! 私がよく伝えておくからそれは!」 「でも東京からだなんて、すごい距離じゃないか。一言だけでも……」 「本当にいいから!」  お父さんや康太に爽を会わせるわけにはいかない。  二人も以前の私のように爽を知らない可能性もあるけれど、もし知っていたら。  絶対に大騒ぎになって、根ほり葉ほり聞かれることになるだろう。  残念そうなお父さんをなんとかなだめて、私は病室を後にした。  とにかくお母さんが無事でいてくれて良かった……。
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