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車に戻ってお母さんのことを説明すると、爽もホッとしたような顔で笑ってくれた。
その表情にすら、胸にジーンとくる。
「良かったな」
「ありがとう。爽のおかげでお母さんに会いにこられた」
「だから、もういいって、それは」
「ごめん」
「謝んなよ」
「……でも、ごめん」
「あー、もうなんなんだよ」
――感謝、してるんだけどな。
これ以上どう伝えたらいいか分からなくて、でも爽にうざったがられるのも嫌で、言葉にするのはやめにした。
爽は焦れったそうに頭をかいている。
「で? 明日、母ちゃんの顔を見てから帰るんだろ?」
「あ、うん。お父さんと弟は一応、今夜は病院に泊まるみたいで……もし爽が大丈夫なら、お父さん達が住んでる親戚の家の離れに泊まってもいいかな?」
「俺は明日、夜まで何もねぇけど……いいのかよ?」
「うん。さっき二人には了承してもらった。親戚には私が明日、病院に行く前に挨拶に寄るから」
「ん。じゃあお言葉に甘えて。美羽は明日、仕事だろ?」
「さすがに明日はお休みをもらおうかな」
「そっか。よし、とりあえず行くか」
もう三時だ。
ああは言ってたけど、三日間のコンサートを乗り切った後に長距離運転なんて疲れていないわけがない。
早く爽を休ませてあげたい。
私たちは病院を後にして、親戚の家に向かった。
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