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爽が腕組みをしながら顎をしゃくった。
「さすがにここで布団をくっつけて寝るわけにもいかねぇよな。一応、美羽も女だし」
「い、一応ってなによ! でも、……ごめん。みんながこんな風に暮らしているって知らなくて……きっと私に心配させないように敢えて言わなかったんだと思う、んだけど……」
「はぁ。なにをお前がショック受けてんだよ。……どんな場所でも、住めば都なんじゃねぇの?」
「……そんなわけないでしょ」
「んなの、本人たちにしか分かんねぇだろ。勝手に憐れんでんじゃねぇよ」
「な、なに言って……」
憐れむ、だなんて。
爽の突き放したような物言いに思わずカチンときて、隣に立つ彼を仰ぎ見ようと顔を向けた瞬間。
私の髪をぐしゃぐしゃと大きな手のひらがかき乱した。
撫でるというより乱すという表現がぴったりな大仰なその感触に、呆気に取られる。
犬にでもなったような気分だ。
「ちょっと!」
その熱い手を押しのけて小さく叫ぶと、細められた茶色い瞳が私をじっと見下ろしていた。
呆れたように下がった口角に、それでもちょっとだけ優しさがこめられているような気がしてしまう。
「あのなぁ、どんな暮らしをしていようと、家族みんな元気で一緒にいられて本人たちが幸せを感じられていれば、それでいいだろ」
「幸せなんて……」
ーーそんなの、この暮らしでどうやって感じるっていうのよ。
「あるかないかは、美羽には分かんねぇだろ」
「そう、だけど……」
「じゃあ美羽は今の暮らしのなかで、楽しいこと、嬉しいことは一つもなかったのか?」
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