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「やめてください。そんなのダメです。いただけません」
「でも、いつまでもこんなことやってる方が俺も困るんで」
「困るって何よ! 困ってるのはこっち……!」
「いいから」
彼がもう一度、周囲を見回してから、サッと足元にひざまずいた。
「え」
突然のことに言葉がでない。
固まったまま彼を見下ろすと、指を私の足にかけるところだった。
その、細いけれど男らしい指から伝わる体温。
私が唖然としている間に、彼はそっとパンプスを抜き取った。
一瞬、こちらを見上げる茶色い瞳と目が合う。
爪先にスニーカーを添えられて、やんわりと足首が彼の指に支えられる。
ドクン。
心臓の音が突然、耳の奥に大きく響いて周囲の音が何も聞こえなくなった。
頬がかぁっと熱をもつ。
――やだ、こんなの。
こんな、シンデレラみたいに。
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