第一章 ティファニーの魔法

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「やめてください。そんなのダメです。いただけません」 「でも、いつまでもこんなことやってる方が俺も困るんで」 「困るって何よ! 困ってるのはこっち……!」 「いいから」  彼がもう一度、周囲を見回してから、サッと足元にひざまずいた。 「え」  突然のことに言葉がでない。  固まったまま彼を見下ろすと、指を私の足にかけるところだった。  その、細いけれど男らしい指から伝わる体温。  私が唖然としている間に、彼はそっとパンプスを抜き取った。  一瞬、こちらを見上げる茶色い瞳と目が合う。  爪先にスニーカーを添えられて、やんわりと足首が彼の指に支えられる。  ドクン。  心臓の音が突然、耳の奥に大きく響いて周囲の音が何も聞こえなくなった。  頬がかぁっと熱をもつ。  ――やだ、こんなの。  こんな、シンデレラみたいに。
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