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「ここで寝るぞ」
「ほ、ほんと?」
「あぁ。いつまでも悩んでるわけにいかねぇだろ。別になんもしねぇから安心しろ」
「そ、それは分かってるけど……」
「じゃあ、俺はこっち側もらう。美羽はそっちな」
諦めたような、自棄を起こしているような口ぶりでそう言って、爽が左側の布団に寝転んだ。
――ものすごく緊張するし、なんだか恥ずかしいけど、しょうがない、よね。
爽の方をちらりと見ると、こちらに背中を向けて横たわっている。
私の腕を引いてくれた時、頼もしく見えた細いけど男らしい後ろ姿。
「電気消せよ」
「う、うん」
壁の照明スイッチに触れるだけなのに、動きがどうにもギクシャクしてしまう。
やっとの思いで電気を消すと、そろそろと布団にもぐりこんだ。
どうしよう。心臓の音がすごく、うるさい。
――でも爽だって何もしないって言ってたんだし。
ただ、一緒に寝るだけだもん。
ただ、こんなに近いだけ。
それだけだから。
私は雑念を振り払って、ゆっくり横になる。
まだ洗剤の香りの残るシーツに沈み込む身体。
ーーちょうど洗い立てのシーツがあってよかった。
爽を家族が寝た後のシーツに寝かせることなんて、できないもの。
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