第七章 触れたい

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「康太、このことはお父さん達にも、お友達にも絶対言わないで」 「えっ、なんで。芸能人の、しかも爽さんと友達なんてすげーじゃん、自慢したいのに」 「康太くん、ごめん。万が一、ファンや事務所に迷惑がかかったら困るんだ。一般人、まして女性と友達だなんて知られると、誤解を招くから」  爽が本当に困ったように眉根を寄せるから、康太も大慌てで「あ、そ、そんな! ご迷惑になるようなことは絶対にしません! 言いません、誰にも。絶対。はい」とまくしたてた。  その後、康太はちゃっかり握手をねだり、爽も慣れた様子で微笑みながら康太の手を両手でしっかり握り返していた。  聞くところによると、康太はお母さんが目を覚ましたので私を呼びにきてくれたらしい。  そんな大切なことを先に言わなかったこと、やっぱり勝手にドアを開けたことは許せなくて文句を言い始めた私から、康太が逃げる。  狭い部屋のなかで、爽に隠れるように背後にまわった。 「爽さん、見ました? 姉ちゃん、昔から怒ると鬼みたいに恐いんですよね」 「ちょ、ちょっと! サイテー! 誰が悪いのよ!」 「ね、姉ちゃん、ごめん、落ち着いて」 「ぷはっ、あはははは!」  言い合う私たちを見て、爽が吹き出して大きな笑い声をあげた。
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