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第八章 動き出す心
長野から戻った翌日。
広報部で異動の挨拶をしたり、デスク周りの確認や寺西さんのスケジュールをチェックしている内にあっという間に昼休みになった。
今日は寺西さんにお弁当を持ってこないように言われたから、入社して初めての手ぶらでの出社。
寺西さんのデスクを見ると、ちょうど仕事の電話をしているようで、私に向かって「ちょっと待って」と声を出さずに大きく口を動かした。
そこで佐々岡さんからスマホにメッセージが届いた。
『お疲れ様です! 灰田さんのいない生産部、寂しいですよー>< 部署は変わっても一緒にランチできますよね? 休憩室行きましょー!』
あ、そっか。今日はお弁当じゃないって佐々岡さんに伝えてなかった。
『ごめん! 今日はお弁当持ってきてなくて』
『灰田さんがお弁当じゃないなんて珍しいですね! 何か買いに行きますか?』
『寺西さんに今日は外に出る予定があるから、お弁当は持ってこないでって言われちゃったんだ汗』
それまで即レスだったのに、既読がついたまましばらく返信がない。
――佐々岡さん、どうしたんだろ?
そんな風に思ったのも束の間、絵文字いっぱいの彼女からのメッセージがトーク画面に表示された。
『えー! それって寺西さんと外ランチってことですか? いいないいなー><; 今度詳しく話聞かせてくださいね♡』
『ごめんね。また明日、一緒にご飯食べよう!』
『はーい! また連絡します^^』
佐々岡さんの変わらない様子にホッとしてアプリを閉じると「ごめんごめん。じゃ、行こうか」と寺西さんから声をかけられた。
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