第八章 動き出す心

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「ホントに美羽ちゃんって変な子だね」 「真剣に怒ってるのに、変って失礼です」 「真剣に怒ってるから、だよ。最初に会ったとき思った通りだ。君は俺が出会ってきた他の女性たちとはまるで違う。手放せなくなりそうだよ」 「もう、またそんな冗談ばっかり! そういうのさえなければチャラ男だなんて言わなかったんですけどね」  寺西さんがまだ笑いながらあっけらかんとそんなことを言うから、私の女性への怒りはすっかりどこかに消え失せてしまった。  呆れ果ててティラミスの残りをスプーンで大仰にすくって食べると、ほろ苦い甘さが口いっぱいに広がる。 「冗談でもないんだけどねぇ」と呟いた寺西さんが肘をついて、こっちを眺めている。  私はまたそんな彼の冗談をなだめすかして、ドルチェの最後の一口を味わった。
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