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その高く空に向かって伸びるタワーマンションの前にタクシーが停まった瞬間、あまりの驚きに言葉が出なかった。
まさか爽と寺西さんが同じマンションに住んでいるなんて……。
「ん? どうしたの?」
「あ、す、すみません。なんでもないです」
不思議そうな顔をする寺西さんに促され、慌ててタクシーを降りる。
同じマンションでもいつもと違うのは、ここが正面入り口の車寄せだということだ。
ーー初めて正面から入る……。
ドキドキしながら寺西さんについてホテルのようなシックなエントランスを抜けると、明るくて天井の高い空間が広がっていた。
――すごい、コンシェルジュもいるし、何かの施設かホテルにしか見えない。
煌びやかなシャンデリアのような照明、黒い大理石の間をゆっくりと流れる水。
高級感溢れる造作と静かな雰囲気に圧倒される。
「すぐ取ってくるからロビーで待ってて。あっちに座る場所もあるから」
「あ、はい」
寺西さんが指をさした先に綺麗に手入れされた観葉植物に囲まれて、いかにも高級そうな皮張りのソファーが数組置いてある。
「美羽……?」
その声が聞こえたのは、そちらに向かって足を一歩踏み出そうとした時だった。
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