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もうすっかり聞き慣れた、私の名前を呼ぶよく通る声。
顔を上げると爽がロビーの向こう、エレベーターホールから歩いてくるのが見えた。
寺西さんは驚いたように、ちょっと眉をひそめる。
「都築くん」
「寺西さん。こんにちは」
「どうも。都築くん、どうしてここに?」
「どうしてって……うち、ここなんで」
「え、都築くんも? 偶然だね。俺もこのマンションに住んでるんだ。って言っても、わりと最近、越してきたんだけどね」
「そうなん、すか」
何故だか歯切れの悪い返事をしながら、爽はちらりと私を見た。
寺西さんがそんな彼と私を眺めながら、やんわりと微笑む。
「あぁ、そういえば君たち、おともだち、なんだっけ?」
おともだち、と強調するような寺西さんの言葉。
ーーそっか、友達。寺西さんにはそういうことになってるんだった。
爽が首を揉みながら「まぁ、そんなとこです」とぼそぼそ答える。
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