第八章 動き出す心

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 もうすっかり聞き慣れた、私の名前を呼ぶよく通る声。  顔を上げると爽がロビーの向こう、エレベーターホールから歩いてくるのが見えた。  寺西さんは驚いたように、ちょっと眉をひそめる。 「都築くん」 「寺西さん。こんにちは」 「どうも。都築くん、どうしてここに?」 「どうしてって……うち、ここなんで」 「え、都築くんも? 偶然だね。俺もこのマンションに住んでるんだ。って言っても、わりと最近、越してきたんだけどね」 「そうなん、すか」  何故だか歯切れの悪い返事をしながら、爽はちらりと私を見た。  寺西さんがそんな彼と私を眺めながら、やんわりと微笑む。 「あぁ、そういえば君たち、おともだち、なんだっけ?」  おともだち、と強調するような寺西さんの言葉。  ーーそっか、友達。寺西さんにはそういうことになってるんだった。  爽が首を揉みながら「まぁ、そんなとこです」とぼそぼそ答える。
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