第九章 ランウェイをあなたと

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 楽屋に戻ると広報部の男性社員――確か、直井さん、が血の気の引いた顔で駆け寄ってきた。  先ほどまでのショーを控えた緊張感や高揚感の漂う空気とはまったく違う、妙な空気が漂っている。 「大変です。田無さんがショーに間に合わなさそうだって……」 「どういうこと?」  いつも微笑みを絶やさない寺西さんの表情がさっと曇る。 「今朝までドラマの撮影で山梨にいたみたいなんですけど……高速道路が事故渋滞で身動きできないって」 「今どの辺か聞いた?」 「やっと八王子に入ったところだそうです」 「開演まで一時間半か。スムーズに動き出せばギリギリ間に合うだろうけど、準備もあるし厳しいな」  そんな。  もし田無さんが間に合わなかったらどうしよう……。
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