第九章 ランウェイをあなたと

11/23

367人が本棚に入れています
本棚に追加
/245ページ
「大丈夫ですか?」  ヘアセットとメイクを終えた爽が状況を察して寺西さんに問いかける。  それでも寺西さんは無言で、今度は爽を頭から足の先まで眺めた。  爽の衣装はベージュの緩い素材のジャケットとスラックスのセットアップで、幾何学模様のインナーがまくった袖からのぞいている。  足元はスニーカーでジャケットを羽織りつつもラフな印象だ。  爽ならどんな洋服だって着こなせそうだけど、爽のためにデザインされたみたいにすごく似合ってる。  寺西さん、きっと爽一人でランウェイを歩かせるべきか、田無さんの代役をたてるか考えているんだろうな。  黙ったままの寺西さんを見つめていると、彼も私を見返して目が合う。  ――?  そのまま爽にしたみたいに、私の頭からつま先まで視線を何度も往復させた。
/245ページ

最初のコメントを投稿しよう!

367人が本棚に入れています
本棚に追加