第九章 ランウェイをあなたと

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 この場にいる全員の目をしっかり見つめる寺西さん。  凛と、リーダー然としたその態度と声にみんなが固唾をのんで注目する。 「かつて我が社は繊維メーカーとして、百貨店に入るような主に高所得者層をターゲットとしたアパレル企業と取引していた。それがバブル崩壊後、日本経済が悪化していくなかで、先代の『女性たちの日常生活を彩る、実用的でありながら、ちゃんと自分らしくおしゃれのできる服を作りたい。多くの人が手に取りやすい価格で、女性の日々の美しさに寄り添いたい』という思いからReal clothesというブランドが作られ、我が社が衣料品メーカーへと生まれ変わるきっかけになった。だから俺は本来、Real clothesの洋服は背が高くて手足が長い、理想的なスタイルのモデルに着てもらうのではなく、一般の女の子たちが自己を投影できるような、そんな等身大の女の子にこそ着てほしい」  順繰りに全員を見渡していた寺西さんの真剣な深い色をした瞳が、最後に私で止まる。  冷静に見えるのに、奥に炎のちらつくような、射貫くような視線。 「だけど誰でもいいわけでは決してない。清潔感があって、媚びたようには決して見えない、芯の強さが滲み出る子。美羽ちゃん、君は理想的だ」 「で、でも……」
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