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そこで入り口のそばで腕組みしていた設楽さんが眉間に皺を寄せた。
「待ってください。爽はアイドルですよ。こんな一般人の、素人の女性と出演して、ファンが何て思うか……」
「なので、僕も出ます」
「……寺西さんが、ですか?」
寺西さんの有無を言わせない表情。
「モデルの経験もありますし、本来、僕はうちの広報です。そしてReal clothesのショーのラストに男性だけが登場するなんて、ブランド理念的にありえない。田無さんがこられない以上、僕は灰田さんにランウェイを歩いてほしいと思っています。でも設楽さんのおっしゃるように一般女性である灰田さんが都築くんと二人で登場したらいらぬ憶測を呼ぶ。だから広報部から僕と灰田さんが、都築くんと一緒に出たことにすればいい」
「ですが……」
「今回の件は映画の宣伝とReal clothesの宣伝を兼ねているんです。今後もきちんとお取引させていただくうえでは、こうするのがベストではないでしょうか」
「寺西さん、あなたね……」
「なにか問題が発生するようでしたら、僕が責任をとります。ですから、どうか」
納得できないといった様子の設楽さんがしばらく何かを考えたあと「事務所に報告させてもらいます」と強張った声で言って、部屋を出て行った。
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