第九章 ランウェイをあなたと

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 いつもより少し派手なメイク。  でも寺西さんの言うReal clothesのブランドコンセプトのためか、過度にインパクトのあるメイクじゃない。  普段自分では選ばない明るいオレンジのリップやボルドーとテラコッタカラーの中間のような女の子らしくも温かみのあるアイシャドウ。  肩甲骨の下あたりまである黒髪がふわふわに巻かれ、ラメ入りのスプレーが振りかけられて細かなラメの粒子がキラキラと輝いた。  ーー自分が自分じゃないみたい。    胸の高鳴りを感じながら席をたつと、そこに寺西さんがやってきた。  すらりとした長身に映えるグレーのトレンチコートを羽織り、爽とは対照的な黒い薄手のニットとボルドーのスキニー姿。  本職のモデルにも引けをとらない着こなしだ。  スタッフとの会話を終えた爽も隣に並んで、二人して私をまじまじと見つめてくる。 「美羽ちゃん、よく似合ってるよ」 「あ、ありがとうございます……」  なんだかものすごく照れくさい。  笑顔の寺西さんと、むっつりと黙り込んだ爽。 「自信もって。すごく可愛いよ」 「そ、そんな」  寺西さんの真っ直ぐすぎる賞賛に顔が熱くなる。  なんでこう、しっかり目を見つめて、平気でそういうこと言うかな……。 「ね、都築くんもそう思うよね?」 「ちょ、寺西さん!」
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