第九章 ランウェイをあなたと

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 突然、寺西さんがそんな風に爽に話を振るから、血の気が引いたような、血圧が上がったような、なんだかもう自分でも訳が分からなくなってしまう。  すると口をつぐんでいた爽が、ひとつ咳ばらいをした。 「そ、そうだな。……まぁ、悪くねぇよ」 「悪くないってなんだろうね。都築くんは素直じゃないなぁ」 「はぁ? なんすかそれ」  爽の顔がみるみるうちに真っ赤に染まる。  いたずらっぽくニヤニヤ笑う寺西さんが肩をすくめた。  爽は「はっ」と鼻で笑うと、上気した顔を隠すようにそっぽを向いてしまう。  もうすっかり寺西さんの前でも素の爽そのものだ。  私はそんな二人を眺めながら、四十分後に控えたショーでの出番に思いを馳せた。  すごく緊張するし、不安でたまらない。  ――本当に大丈夫なのかな……。
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