第九章 ランウェイをあなたと

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 その後、すぐに運営スタッフが呼びにきて、私たちは他のモデルと一緒にステージ裏に移動した。  ここにもたくさんのスタッフたちがいて、Real clothesの前に紹介されたブランドのモデルたちの最終チェックをしている人や、進行表とインカムを手に慌ただしく駆け回っている人もいた。  ベニヤ板と鉄パイプ、黒い布で作られたセット裏に感心する心の余裕もなく、震えだした右手を左手で抑える。  手のひらは汗でびっしょりだ。  前のブランドのモデルたちが四段ほどの階段をのぼり、ステージに出ていく。  大音量の重低音のきいた音楽に、私の胸の音まで早く、大きく共鳴するように震える。  深呼吸しようとしても、呼吸が浅い。  あっという間にモデルたちが戻ってきて、前のブランドの出番が終わった。  そして運営スタッフがインカムで合図を出したかと思うと、今度はReal clothesのブランドイメージ映像が巨大モニターで映し出されたようだ。  バックステージに置かれた小さなモニターにメインステージと同じ映像が流れ始める。  進行スタッフの再びの合図でReal clothesのモデルたちが、ヒールの音を響かせながら慣れた様子でステージへ向かう。  モデルは九人。  彼女たちの出番が終わるまで、たったの数分。  あと数分で、私も彼女たちのようにあそこに上がるんだ……。
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