第九章 ランウェイをあなたと

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 私なんかに務まるのかな……本当に私でいいのかな……。  駄目だ、緊張する。  足がすくんで、身体の震えが止まらない。  会場の観客たちからは大きな歓声が湧き上がる。  モデルに向けられたその熱狂的な叫びに、やっぱり私みたいな一般人が出ていくべきじゃないんじゃないかとか、申し訳ない気持ちになってしまう。  そうしているうちにランウェイを歩き終えたモデルたちが全員一度戻ってきて、最後にもう一度ステージに出ていった。  このあと彼女たちは再びランウェイを一周して、最後に巨大モニターの下で横一列に並ぶはずだ。  そして戻ってきたら、今度こそ。  今度こそ、私たちの出番。  ごくりと生唾を飲み込む。  歓声とともにモデルたちが戻ってきた。  進行スタッフの合図。  階段上のライトとモニターの明かりで切り取られたような、ステージのむこうが暗転する。  男性ボーカルのバラード曲にのって田無さんのセリフが聞こえる。  ーー映画の予告映像が流れ始めたんだ……。  ドクンドクンと、すごい早さで鼓動が大きく耳の奥に鳴り響く。  緊張は最高潮に達していた。  もうすぐ予告が終わる。  入り口横のスタッフが十、九、八、七と手でカウントを出し始めた。    寺西さんと爽が階段を上る。  私も行かなきゃ。  でも、ダメ。  不安と緊張で胸がいっぱいで、手も足も身体のすべてが自分のものじゃないみたいだ。  どうしようどうしようどうしようどうしよう……!
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