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「美羽ちゃん」
「美羽」
寺西さんの優しい声が、爽の力強い声が、私の名前を呼ぶ。
ハッとして、二人を見上げると、寺西さんが穏やかに微笑みながらこちらに手を伸ばしていた。
爽も真摯な眼差しで私を見つめると、深く頷いて手を差し出す。
大きな手。
「美羽ちゃんなら、大丈夫。さぁ」
「俺がついてる。安心しろ。いくぞ」
「寺西さん……爽……!」
私を信じてくれる寺西さんと、私を頼もしく導こうとしてくれる爽。
そんな二人を見ていると、不思議と緊張がふっと消え失せて身体の震えがおさまってくる。
私は左手で寺西さんの手を、右手で爽の手をとって、階段をのぼった。
二人に手をひかれながら、一段一段、踏みしめる。
大丈夫。きっと、ふたりがいてくれれば、大丈夫。
私は二人の間に立って顔を上げる。
それぞれの瞳に応えるように頷いた瞬間、パッと明るくなるステージ。
やんわりと包み込まれるように握られた左手と、強くしっかりと握られた右手の温もりを感じながら、一歩ステージに足を踏み出した。
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