第九章 ランウェイをあなたと

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「美羽ちゃん」 「美羽」  寺西さんの優しい声が、爽の力強い声が、私の名前を呼ぶ。  ハッとして、二人を見上げると、寺西さんが穏やかに微笑みながらこちらに手を伸ばしていた。  爽も真摯な眼差しで私を見つめると、深く頷いて手を差し出す。  大きな手。 「美羽ちゃんなら、大丈夫。さぁ」 「俺がついてる。安心しろ。いくぞ」 「寺西さん……爽……!」  私を信じてくれる寺西さんと、私を頼もしく導こうとしてくれる爽。  そんな二人を見ていると、不思議と緊張がふっと消え失せて身体の震えがおさまってくる。  私は左手で寺西さんの手を、右手で爽の手をとって、階段をのぼった。  二人に手をひかれながら、一段一段、踏みしめる。  大丈夫。きっと、ふたりがいてくれれば、大丈夫。  私は二人の間に立って顔を上げる。  それぞれの瞳に応えるように頷いた瞬間、パッと明るくなるステージ。  やんわりと包み込まれるように握られた左手と、強くしっかりと握られた右手の温もりを感じながら、一歩ステージに足を踏み出した。
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