第九章 ランウェイをあなたと

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 天井と足元の発射装置から、橙色や黄色の紙吹雪が舞い落ちる。  ーー綺麗。まるで本物の落ち葉みたいだ。  観客の割れんばかりの歓声が会場いっぱいに轟く。  私たちを照らすスポットライトのまばゆさと、ランウェイを取り囲む観客たちのペンライト。  歓声が鼓膜を揺らすのに、それ以上に鼓動が忙しない。  私たちはT字になったランウェイの先端を目指して歩く。  寺西さんは甘く、爽は秋晴れの空のような爽やかな笑顔を観客に向け、手を振っている。  その度に歓声は大きくなって、私の全身に響いた。  寺西さんが小さく「笑って」と私に囁く。  映画の主題歌を切なく歌い上げるボーカルの声と、観客の黄色い悲鳴といっぱいの笑顔。  降りしきる紅葉した紙吹雪。  そのなかに、二人がいる。  寺西さんと爽がしっかりと、私の手を引いてくれている。  嘘みたいに現実味のない瞬間に、私は二人がそばにいてくれる心強さで、自然と笑みがこぼれた。  ランウェイの両端をめぐり、巨大ビジョンの下、ステージに戻る。  そこで繋いでいた手を放し、爽と寺西さんがスタッフから渡されたマイクを手に、一歩前に出た。
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