第九章 ランウェイをあなたと

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「みなさん、こんにちは! カラフルストリームの都築 爽です」 「TNCホールディングス、Real clothes広報の寺西と灰田です」 「俺が主演する映画『君といる明日は』でReal clothesさんに衣装協力をしていただきました」 「Real clothesの全国の店舗にも明日からお二人とのコラボポスターが飾られる予定です」 「映画は再会するはずのなかった二人の男女が何度も出会い、運命的な恋をするお話になっています。来週、二十四日の金曜に公開です。ぜひ、劇場でお楽しみください」  私と寺西さんは一礼、爽は客席に手を振って、大きな歓声に見送られながらステージを後にした。  ――良かった。無事に終わったんだ。  階段をおりきったところで一気に身体から力が抜け、ペタンとその場に座り込んでしまう。  それをまた寺西さんが手をとって立ち上がらせてくれた。 「よくできました。美羽ちゃん、完璧」 「あ、ありがとうございます……」  声にも力が入らなくてやっとのことで返事をすると、爽が笑った。 「なんだよ、その声。……けど、まぁ、よく頑張ったな」 「……ありがと」  いつの間にか朝のギクシャクした空気はすっかり消えている。  なんとか無事に役目を務めあげられたからか、爽のこの顔をくしゃっとさせた笑顔を見たからか、胸のなかが安堵感でいっぱいだった。
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