第十章 それぞれの想い

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 助手席に乗り込むと、すぐに寺西さんも運転席にやってきた。  その近さに、一瞬、ちょっと緊張してしまう。  前に爽の車に乗った時は誰かに見られないように後部座席に横になって隠れていた。  だからルームミラーごしの爽の目や、運転席のシートから覗く背中や後頭部が印象的で。  ――助手席って、こんなに運転席と近かったんだっけ。  ドギマギしているうちに、寺西さんが慣れた動作で車を発進させる。  前を見据える寺西さんの鼻筋の綺麗な横顔は、やっぱりかっこいい。  車のなかも寺西さんからも、甘い良い匂いがする。 「そんなに見つめられると緊張しちゃうんだけど?」 「わ、ごめんなさい。……でも、寺西さん、緊張することなんてなさそうですよね」 「何言ってんの。美羽ちゃん、俺のこと何か変な生き物だと思ってない? 普通に緊張くらいするよ」 「なんですか、それ。今日のショーでも私はガチガチでしたけど、寺西さんは堂々としてたじゃないですか」 「ああいうのは経験あるからね。でもショーで歩くよりも、気になってる女の子が隣にいることの方がよっぽど緊張するかな」 「へー、そうなんですかー。意外です」 「ねえ、それって、どういう意味?」  笑顔の寺西さんの横顔の向こうを、高速道路の照明灯や高い柵ごしに夜景が流れていく。
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