第十章 それぞれの想い

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「ありがとうございました」 「こちらこそ話し相手になってもらって助かったよ。今日は本当にお疲れ様」 「寺西さんもお疲れ様でした」  車を降りてドアを閉めようとした時、寺西さんに「美羽ちゃん」と呼び止められた。  運転席から、また彼の真剣な目が私を見上げる。 「さっきのこと、俺、本気だからね」 「えっ……?」 「答えなくていい。ただ、さっき言ったのは俺の紛れもない本心だったってこと、それだけは覚えておいて。じゃ、また来週、会社でね」 「あ、は、はい」  寺西さんの車があっという間に遠ざかる。  本気って……。  私にそばにいてほしいって、あれが……?  私は彼のあの言葉にどういう意味があったのか思い悩みながら、爽のマンションに向かってとぼとぼと歩き出した。
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