第二章 優しい夜

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 心の中で彼女には内職を始めたせいで首や肩の凝りがひどいだなんて言えないな、と独り言ちる。  二週間近く前のあの日、母から電話でお金の相談をされてから私もどうにか仕送りを増やせないかと考えた。  だけど、何回計算してみても、このギリギリの生活から捻出できるわけもなく。  それなら収入を増やすしかないと、先週から内職を始めた。  コンビニの深夜バイトなど外で働くことも考えはしたものの、残業をすることも多々あるので時間の縛りがあると難しい。  内職は封筒を作ったり、ボールペンに芯を入れるというような単純作業とはいえ、たくさんの量をこなすにはなかなかに根気が必要だった。  それに朝方までやったとしても、一ヶ月できっと二万円稼げれば良い方といったところだ。  だけど、弟の進学のためにやらなきゃいけない。  弟の顔と、お母さんのあの気まずそうな電話越しの声を思い出すと、自然とため息が口から洩れた。
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