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東京タワーのオレンジ色が歪んで、そこで初めて私は自分の目に涙が溢れているのに気付いた。
窓ガラスに反射して映る室内の光景。
そのなかで爽がソファから立ち上がって、こちらに歩み寄ってくる。
――どうしよう、こんな顔、見られたくない。
そう思った次の瞬間、私は爽の腕のなかにいた。
後ろから力強く私を抱きすくめる爽の腕。
肩越しに感じる熱い吐息。
一瞬、何が起こったのか分からなかったのに、窓ガラスが鏡のように爽に抱きしめられた自分を映していて……すぐに心臓が激しく音をたて始める。
爽に聞こえてしまうんじゃないかと心配になるほど、ドキドキとうるさい。
――爽、なんで。
前の壁ドンの時みたいに何かの悪戯?
でもこんな時に?
「わりぃ」
「な、なに……」
「美羽」
私を抱く腕の力が強くなる。
窓ガラスのなかの爽が切なげに目を伏せた。
「あいつのものになんて、なるな」
「だ、だから寺西さんとはそういう関係じゃ……」
「今はそうかもしれねぇけど、これからのことは分かんねぇだろ」
――どうして、そんなこと……。
「出会った時から、なんか……ほっとけねぇんだよ。転んで靴が壊れただけで大泣きするし、家族のために寝不足になるまで働いて倒れるし」
心臓は全然静まってくれない。
爽が小さくぼそぼそと話す声がすぐ近くに聞こえる。
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