第十章 それぞれの想い

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「最初は俺の母ちゃんみたいで助けてやりたいと思った。けど、メシはうめぇし、俺がアイドルだって知っても一人の人間として接してくれるし……一緒にいて、こんな風にホッとする相手は初めてだった。弁当を届けてもらって一緒にくだらねぇことで笑って、ずっと、こんな関係が続いていけばいいと思ってた」  それは私だってそうだ。  私だって、ただお弁当を届けるだけで、友達と呼べるのかも分からないこの関係だけでいいと思っていた。  それで爽のそばにいることができるなら、ただ、それだけで。 「コンサートで寺西さんと美羽が関係者席にいるのが見えた時、初めてそこでお前を遠く感じた。美羽は一般人で、寺西さんみたいな普通の男といるのがお似合いで、ステージに立つ俺からは、美羽はこんなに遠くにいるのかって」  私が爽との距離を改めて認識させられた、あのコンサート。  あの時、あの瞬間。  爽も私と同じように住む世界が違うって思ったんだ……。 「それから寺西さんと美羽が並んでる姿が頭を離れなくなった。それでマンションの下で寺西さんに美羽のことを気になってるとか協力してほしいとか言われて、もう何がなんだか分からなくなった。なんでお前をほっとけないと思うのか、俺たちのこの関係はなんなのか」 「……そう、だったんだ」
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