第十章 それぞれの想い

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 私の人生に、こんなに幸せなことがあるなんて思わなかった。  きっと私の方が、爽の何十倍、何百倍も嬉しいに決まってる。 「美羽」  私の名前の三文字を呼ぶ、爽の唇がゆっくりと近づいてくる。  私を愛しそうに見つめる瞳がすぐそばにあって、胸の奥がきゅぅっと苦しくなる。  私も顔を上げて、そっと目を閉じた。  爽の吐息が頬にかかる。  そしてすぐに、唇に柔らかい感触が降ってきた。  通じ合うことはないと思っていた気持ち。  触れ合うことはないと思っていた身体。  こうして好きだと伝えあい、抱きしめられてキスをすること。  なんて特別で、なんて幸せなんだろう。  唇が一瞬離れた時に「大好き」と息のできない魚みたいに伝えると、爽の腕の力が強まってすぐに唇を深くはまれる。  それから。私は初めて足を踏み入れた爽の寝室のベッドの上で、甘くて愛しい夜を過ごした。
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