第十一章 ガラスの靴

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第十一章 ガラスの靴

 爽と付き合い始めてから三ヶ月ほどが経った。  主演映画『君といる明日は』は無事に封切られ、舞台挨拶や告知のためのテレビ出演、大ヒット御礼イベントなど、慌ただしい日々を送っていた爽だったけれど、近頃は少しずつ落ち着いてきていた。  多忙な時にも爽はできるだけ連絡をくれたし、私も彼の時間が許す限りマンションに会いにいった。  お弁当はなくてもいいと言ってくれたけど、身体を壊してほしくない一心で、毎回、お弁当を作って持っていく。  爽がそれを心の底から喜んでるような顔で笑ってくれるから、私はいつも満たされていた。 「美羽は良い嫁さんになるな」と言ったと思いきや、「こんな仕事だから、いつ結婚できるか分かんねぇけど……」と落ち込んで見せる。  そんな彼が愛しくて、私はいつもたまらず抱きついてしまうのだった。  そんな爽自身と、そばにいる時間、会えない時に爽が送ってくれるメッセージや写真が、すべてが大切でかけがえのないものだ。  寺西さんは私の変化にすぐに気が付いて、爽とうまくいったことを言い当てられた。  なんとなく気まずくなることを懸念していたのだけれど、寺西さんは「俺の負けかぁ。うーん、残念」と冗談めかして笑ったきり、これまで通り普通に接してくれている。
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