第十一章 ガラスの靴

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 仕事も引き続き寺西さんのアシスタントを担当させてもらっていて、たまに爽は「なぁ、仕事とはいえ、寺西さんと二人の時間けっこうあんじゃねぇの? あんまりおもしろくねぇなー」と、ふてくされる。  私としてはそんな態度もヤキモチ妬いてくれてるのかな、なんて嬉しくなってしまうんだけど、絶対怒るから言わない。  芸能人だから思ったように会えない時もあるけれど、私はよく街中で爽を見つけた。  それは仕事の関係者への手土産を買いに社外に出たり、取引先への移動中。  駅の構内の広告や、ビルの巨大ビジョンに、爽の姿が映る。  ーー爽、やっぱりかっこいいなぁ。私、この人の彼女なんだ、よね……。  私は爽を見かける度に幸せを噛み締め、仕事へのやる気をみなぎらせるのだった。  恋のパワーってすごい。  ひとつ変わったことと言えば、佐々岡さんが柚木さんと外でランチをするようになった。  ――部署が変わっちゃったんだし仕方ないのかな……。  毎日のことで気付いていなかったけど、佐々岡さんとランチするのって職場でホッとできる楽しい時間だったんだよね。  私はいつも佐々岡さんのいない休憩室で一人、寂しさを感じていた。
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