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水曜日の仕事帰り、私は爽に呼ばれて彼のマンションにいた。
今日は私が爽の部屋で作ったーーキッチンに調理器具が全然ないし、後ろからちょっかいをかけてくる爽をかわすのに大変だったーーパスタとサラダを食べて、ソファの上、二人でぴったりくっついて映画を観る。
まったりした、なによりも幸せな時間。
そこに久しぶりに康太から電話がかかってきた。
せっかく爽といる時にでなくてもいいや、なんて思って放置していると、爽が「出れば?」と言うので渋々、通話ボタンをタップする。
「もしもし?」
爽は隣で映画を一時停止させて、炭酸水を飲み干した。
「姉ちゃん、誕生日おめでとう!」
康太の大きな声の向こうから、すっかり元気になったお母さんとお父さんも口々に「おめでとう」と言っているのが聞こえてきた。
――あぁ、やっぱり。
そう、今日、十月十二日は私の二十六歳の誕生日だ。
「いつもありがとう」とか「身体に気をつけてね」と言ってくれる家族との電話を終え、終話ボタンをタップした瞬間、爽が大声をあげた。
「今日が誕生日だって、なんで早く言わねぇんだよ!」
「あ、やっぱり聞こえてた?」
苦笑して返すと、爽はちょっと怒りながら席をたって廊下に出て行ってしまった。
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