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仕事を終え、六本木駅から電車に揺られること十分ほど。
赤羽橋から徒歩十分強のマンションの自室に戻ると時刻は八時半になろうとしていた。
昔、お父さんに助けてもらったことがあるという知人が我が家のピンチを知り、この投資用に買っていたというマンションを格安で貸してくれた。
都内の、しかも高級住宅地とも名高いエリアの駅近マンションで、八畳のワンルームを三万円だなんて、ありえないほどの破格。
お父さんの人の好さが仇となった借金地獄ではあるけれど、こうして救われることもある。
情けは人の為ならず、というのが家訓のように繰り返されるお父さんの口癖だ。
食事をとって入浴を済ませ布団に入ってしまいたいところを、なんとか自分に喝を入れ、小さなローテーブルに向かう。
内職はひとつひとつが一円にも満たない世界。
毎日こつこつやらないと、目標金額を達成することはできない。
私はテーブルの上に内職用のトレーを引き寄せると、日中の仕事で疲労のたまった目をこらしながら封筒を組み立て始めた。
私の性格的に細かい作業や単純作業自体は苦ではないけれど、仕事や連日の夜更かしでたまった疲労がなかなかに堪える。
集中しながらも時折、首を揉んだり肩をまわしたりしながら、少しでも凝りがほぐれないかと苦心していた。
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