第十一章 ガラスの靴

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 嫌がらせが始まって数日は爽から返ってきていたメッセージも、何故かパッタリ返信がない。  これまで忙しいなかでも毎日一言くらいは連絡のやり取りがあったのに……。  ――やっぱりきっと私のせいで爽に迷惑がかかってるんだ……どうしよう……。  それでも何もできないまま時間だけが過ぎていく。  翌週になっても嫌がらせは続き、私は寺西さんがとってくれたビジネスホテルで寝泊まりする日々を送っていた。  一度ネットに出た情報は完全に消えることはない。  拡散されてたくさんの人が目にして、更にそれを広げていく。  それでも怖さよりも真っ先に爽を心配する気持ちになるのは、私が何よりも爽のことを大切に思っている証拠だった。  私の情報がネットにばら撒かれてから二週間ほどが過ぎた、金曜日の朝。  心配してホテルまで迎えにきてくれた寺西さんと一緒に会社に向かう。  途中、コンビニに立ち寄りたいという彼について店内に入り、買い物が終わるまで時間をつぶそうと窓ガラス沿いに並ぶマガジンラックに近づいた時。  女性週刊誌の表紙に大きく印刷された『カラフルストリーム都築爽(25)田無瑞穂(22)との共演愛、撮った!』の見出しに目が吸い寄せられた。  胸がざわざわして一気に血の気が引く。  芸能ゴシップの見出しばかりが並ぶそれを抜き取ってページをめくろうとするのに、指が震えてうまくいかない。  見たくないのに……。  私を突き動かすのは、全身を這いまわる不安。  その記事は最初の方のページに大きく掲載されていた。
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