第十一章 ガラスの靴

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 頭の中をここしばらくの出来事がかけめぐる。  あんなに幸せだった誕生日は幻だったんじゃないかと思うほど、色んなことがありすぎた。  常に誰かの視線を感じたり、スマホの電池が切れるほどの悪戯電話や嫌がらせ行為の数々。  寺西さんにも迷惑をかけていることや、爽と連絡がとれなくなったこと。  すべてが気がかりでホテルに避難してからはまともに眠れていなかった。  だけどそんなこれまでのことが全部吹っ飛ぶくらいの衝撃。  嫌がらせとか、個人情報を晒されたことなんかどうでもよくなる。  ――爽、私はどうしたらいいの?  ホテルに戻ってからも休めるわけなんかなくて、私はずっと爽のことを考えていた。  出会ってからこれまでネットで爽について検索をしたことは一度もない。  私の前では爽は出来過ぎた爽やかな好青年なんかじゃなくて、ぶっきらぼうで優しくて、普通の自然体な男の人だったから。  だから私は彼の仕事のことを詮索することはなかったし、爽から話してくれることだけを受け入れることにしてきた。  ネットやテレビの中の情報なんかより、目の前の爽を知っていれば、信じてさえいればいいと思っていた。  でも爽と連絡がとれなくなってしまった今、ネットで調べてみるくらいしか彼の動向を知ることはできない。  私は恐る恐るスマホのウェブブラウザを立ち上げて、検索ワードに『カラスト 爽』と入力する。  膨大な情報の海で爽の情報がピックアップされる。    私の知らない、芸能人としての爽。  今朝発売になった週刊誌の記事で話題は持ち切りのようで、SNS上ではファンの色んな意見が飛び交っている。
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