第十一章 ガラスの靴

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 これが爽のファン。  アイドルとしての爽を見ている人たちの言葉。  憶測で語られる爽と田無さんと、私の姿。  熱愛を叩いたり、ショックを受けたり、祝福したり、反応は様々だ。  結局、こんなものを見たところで、爽の本心や本当の爽の気持ちが分かるわけじゃない。  ――なにやってんだろ、私。  爽が今、何をしているのか。  何を考えているのか。  何も分からないのに、田無さんが本命だったという多くのつぶやきを見て勝手に傷ついている。  スマホを閉じて目をつぶっても、まぶたの裏に週刊誌で見た、楽しそうに夜道を歩く爽と田無さんの写真が浮かんで目の淵から涙が流れた。  夕方、寺西さんからの電話でスマホが震えた。 「もしもし」 「美羽ちゃん。お腹空いてない? 気分転換に何か美味しいものでも食べに行こうか」 「いえ……あの、寺西さん。私、爽に直接会って、話を聞こうと思います」  この数時間、たくさん悩んで出した答え。  連絡がないってことは何か事情があるんだろうし、会いに行っても迷惑になるだけかもしれない。  これまでそう思ってきたけれど……。  じっと待っていても、ネットをのぞいてみても、爽の気持ちが分かるわけじゃない。  だったら直接会って、話を聞くしかない。    信じたいけど、信じているつもりだけど。  もしかしたら見たくない現実を目の当たりにするかもしれない。  でもこうしてただ状況も分からず、じっと待っているだけより何倍もマシだ。  気が付くと、私は固くこぶしを握り締めていた。
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