366人が本棚に入れています
本棚に追加
/245ページ
「そっか。じゃあ迎えに行くよ」
「寺西さんに送ってもらうわけにはいきません。一人で行きます」
「俺は会社から帰るついでに寄るだけだよ。都築くんとは同じマンションだからね」
電話口の向こうで、私を気遣ってくれているのか、寺西さんが冗談めかして笑う声が聞こえる。
「それにね、俺がそうしたいんだ。彼に話を聞きに行くのは美羽ちゃんだけで行くといい。だけどせめてそこまでは、そばにいさせてほしい」
「……寺西さん」
「じゃ、準備して待ってて」
そう言い残して、寺西さんは電話を切った。
ーーどうしてこんな私なんかに優しくしてくれるんだろう。
いつも寺西さんには助けてもらいっぱなしだ。
本当は一人で行くのが怖かった。
もし私の信じた爽が、本当の爽じゃなかったら。
爽が私を嫌いになったら。
もう爽と会うことができなくなったとしたら。
そんな可能性が頭をよぎって、心のなかにこびりつく。
信じてるはずなのに、こんなの変だ。
だから今、寺西さんが迎えにきてくれるということがすごく心強かった。
最初のコメントを投稿しよう!