第十一章 ガラスの靴

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「あれは嘘だ。事務所がネットの書き込みで美羽とのことを知って、あの記事をでっちあげた。田無さんとは付き合ってなんていねぇし、あの写真だって……あれは映画の打ち上げで近くにスタッフや共演者もいたんだ。それをまるで二人で会ってるかのように切り取った」 「どうしてそんなこと……」 「火消しのためもあったんだろうけど、一般人の美羽と付き合ってるよりは映画の宣伝にもなる女優と付き合ってることにした方が都合がいいからだろうな。事務所にとってもスポンサーにとっても、ファンにとっても」 「なにそれ……全然分かんないよ」  芸能事務所ってそんなことをするものなんだろうか。  私との熱愛の疑惑を打ち消すために、嘘の熱愛記事を出すなんて……芸能界って怖い。  ーーでもやっぱり、爽は田無さんとは何もなかったんだ……。  爽が私を嫌いになったわけじゃないんだ……。  それだけで、また泣きそうになってしまうほど嬉しい。 「爽……」 「傷つけて、不安にさせて悪かった」 「ううん、私、爽のこと……」  爽の熱のこもった瞳が私を見つめる。  これからどうしたらいいのかなんて分からないのに、見つめ合う私たちの間には確かにまだお互いを想う気持ちがちゃんとある。
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