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「今日はそれに決まりね! 靴は……うん、良いの履いてきてるし、そのままでいいか」
そうだ、靴。
嫌がらせを受けるようになって急いでホテルに避難したから、靴まで何足も持ってくることもできず、今も爽にプレゼントしてもらったパンプスを履いている。
――別れたのにこれを履き続けてるのも、きっとあんまり良いことじゃないよね……。
そんなことを思うと、また悲しみに引きずりこまれそうになる。
「またそんな顔して。可愛い洋服がだいなしよ! ほら、ついてきて」
呆れ顔の桧山さんに引っ張られて隣の部屋に連れていかれる。
そこにはやっぱりジャパンガールズコレクションの時に見かけた私と同年代の男性のメイクさんがいた。
私は桧山さんに強引に鏡の前に座らされる。
「とびっきり可愛くしてあげて! てらっちの大事な子だからね」
「任せてください」
にかっと笑ったメイクさんにあれよあれよと言う間にヘアセットとメイクを施される。
鏡に映る自分がどんどん変わっていく様子がなんだか不思議だ。
百均やドラッグストアの数百円の化粧品しか使ったことのない私には、緊張してしまうような高級ブランドのロゴの入った化粧品。
自分では選ばないようなアイシャドウやリップの色。
ふわふわに巻かれていく髪。
腫れた目元やクマも綺麗に隠されて、まるで別人みたいだ。
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