第十ニ章 普通だけど普通じゃない、特別な日

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 二十分ほどで衣装室のドアを開けた私を見て、寺西さんはにっこり微笑んだ。 「すごく可愛いよ、美羽ちゃん」 「あ、ありがとうございます」  照れくさくて頬が熱くなる。  そんな私たちを桧山さんがニヤニヤしながら眺めていた。 「まるでシンデレラねー。辛気臭い顔してたのが嘘みたい。てらっちという王子様のおかげで変身できたわね」 「というと、桧山さんは魔法使いのおばあさんですか?」 「ちょっと! まだそんな年じゃないっての! 失礼ね!」  大声でゲラゲラ笑う桧山さんと悪戯っぽく微笑する寺西さんを見ていると、可笑しさがこみあげてきて思わず吹き出してしまった。  それでまた二人も顔を見合わせて笑う。  ーーすごく悲しいはずなのに、不思議。  衣装室は私たちの楽しげな笑い声が満ちていた。
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