第十ニ章 普通だけど普通じゃない、特別な日

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 テーブルセッティングされたテーブルに向い合せで座り、船の出航とともにコース料理が運ばれてくる。  フランス料理だというそれらはどれも私が食べたことのないようなものばかりで、見た目も味も素晴らしかった。  食事の間、窓から見えるレインボーブリッジやお台場、コンテナヤードの灯りは街から見るどの夜景とも違う。  ロマンチックで美しい光。  しばらく浮上することはないはずの落ち込んでいた心でも、寺西さんのおかげで楽しさやご飯のおいしさ、景色を綺麗だと思う気持ちをちゃんと感じている。  食後のホットコーヒーを飲み終えた頃、寺西さんの提案で部屋の外の展望デッキに出てみることになった。  先にデッキへと降り立った寺西さんが振り向いて「揺れるから」と手を差し伸べてくれる。  これまで何度か寺西さんから手を繋がれたことはあったけれど、自分から手をとるとなると少し緊張してしまう。  この行為に特別な意味なんてない。  ただ危なくないように支えてもらうだけ。  それだけ。  そう自分に言い聞かせるようにして寺西さんの手のひらにそっと左手をのせると、彼がきゅっと指を絡める。  勝手に鼓動がとくん、と音をたてた。
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