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寺西さんの言葉に鼓動がどんどん大きくなる。
ずっと私に良くしてくれていたし、思わせぶりな発言だって全部、チャラチャラした寺西さんらしい冗談だって思っていたのに。
ーー本当に?
「寺西さん……」
「美羽ちゃんは俺が見つけた、たった一人の女性だ。美羽ちゃんといられたらきっと毎日が楽しくて、ずっと大切なことを見失わずにいられる。俺と結婚を前提に付き合ってください」
私だって今日は寺西さんのおかげで笑うことも食事を楽しむこともできた。
彼の存在に、どれだけ支えられているか分からない。
寺西さんはベランダで出会ったあの日から、いつだってどこまでも優しくて。
私はいつもそれに甘えて、助けてもらいっぱなしだ。
だけど心のなかは爽でいっぱいで、自分から身を引いたくせに愛しい気持ちは消えてなんてくれない。
「でも、私はまだ……」
「ねぇ、美羽ちゃん。都築くんといても普通の幸せは手に入らない。今日みたいに街中で手を繋いだり、遊園地や人目のあるところでデートをしたり、望んだタイミングで結婚することもできないだろう。もしも都築くんと元に戻れたとして、美羽ちゃんはそれで本当に幸せかな?」
「それ、は」
「俺なら君が望むもの、全部あげる。したいことは全部叶えてあげる。誰よりも幸せにする自信もある。だから……すぐに都築くんを忘れられなくたってかまわない。そんな風に誰かをちゃんと愛する美羽ちゃんも好きだ」
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