第十ニ章 普通だけど普通じゃない、特別な日

19/22

365人が本棚に入れています
本棚に追加
/245ページ
「佐々岡さんがネットに写真を流したのね?」  彼女は何も答えない。  あの写真がスマホに入っているのを見たはずなのに、心のどこかで信じたくないと思っている自分がいた。  この決定的な言葉を否定してほしかった。  だけど何も言ってくれないってことは、肯定するのと一緒だ。  佐々岡さんの大きな目に涙が溢れる。 「だって、ずるいじゃないですか。いきなり寺西さんに気に入られて広報部に異動して、そのうえ芸能人の都築爽とも関係があって?」 「そんな……」 「ジャパンガールズコレクションのネットニュースの記事を見て驚きました。これまでまったく恋愛には興味ありません、何も知りませんみたいな顔してたくせに、都築爽と寺西さん、男二人に囲まれてニコニコしちゃって。先に寺西さんを好きになったのは私なのに、横からかすめとってくなんてありえないっていうか」  佐々岡さんの言葉は私の心に鋭い棘のように突き刺さって、思い出の中の彼女の姿さえかすませる。  こうなる前になんとかできなかったのかな。  佐々岡さんにこんなことをさせる前に、なにか。
/245ページ

最初のコメントを投稿しよう!

365人が本棚に入れています
本棚に追加