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「それからずっと灰田さんのことを尾行して……都築爽と関係があるのを知りました。寺西さんにも取り入ったくせに、都築爽とも付き合ってるなんて良いとこどりですよね。だからムカついて二人の写真を撮ってネットに晒しました。……これで満足ですか?」
涙を流しながら私を睨みつける佐々岡さんの瞳を見ていると、彼女と働いてきたこの数年の思い出がどんどん頭の中に浮かんでは消えた。
――満足なんて、そんなわけないじゃない。
「ねぇ、佐々岡さん。私もずっと佐々岡さんのことが羨ましかったんだよ」
「え?」
佐々岡さんが驚いたように目を見開いた。
「私ね、家庭の事情で家族に仕送りしないといけなくて、本当にお金がなかったの。もう、毎日生きるのに必死で。いつも節約弁当を持ってきてたのもそのせい。おかげでおしゃれも外食も恋愛も人並みに楽しむこともできなくて……。だからずっと可愛くメイクしたり着飾ったり、美容に気を遣えることも、カフェのテイクアウトや美味しそうなお昼ご飯を食べてることも、旅行や習い事で充実してることも。そして、正社員であることも。ぜんぶ、ぜんぶ、佐々岡さんがものすごく羨ましかった」
「嘘……そんなこと、これまで一言も」
「言うわけないよ。毎日一緒に頑張ってるあなたが羨ましいだなんて。言ってしまったら、そんなのあんまりにも惨めじゃない」
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